贈り物:新入生のみなさまへ

 

新入生のみなさま、ご入学おめでとうございます. アメ研HP管理部は新年度お祝企画として、卒業生の方々からのメッセージをみなさまにお贈り申し上げます. 新院生・新学部生のみなさまにとり、お役に立つものを何かお届け出来ますなら、大変嬉しく思います. みなさまそれぞれの希望と期待がかなう学生生活を送られますよう、陰ながら応援しております. (on April 10, 2003, from webmasters)


@ご入学おめでとうございます。  A埼玉大学でアメリカ研究を志された皆さんへ  B5つのアドバイス  Cアメ研仲間を活用しましょう

 

ご入学おめでとうございます

堀西 健夫(ホリニシ タケオ) 

ご入学おめでとうございます。

私はちょうど一年前の3月に埼玉大学の修士課程を修了しました。有賀先生が指導教官でした。現在は東北大学の大学院に在籍しています。今日は新たに院に入学なさったみなさんに、私の学生生活を振り返って考えたことを、短いですがお話したいと思います。少しでもみなさんの学生生活の参考になれば幸いです。

私は埼玉大学には二年間だけいましたので、勉強はかなり大変でしたし、十分に勉強できたとは言えず、遣り残してしまったことが沢山あります。原因は、英語力の無さ、アメリカについての知識の無さだと思います。だから、今も勉強しなくてはならないことが沢山あります。

こんな私のみなさんへのアドバイスは、先生方と沢山コミュニケーションをもつことです。勉強で分からなかったり迷ったりした時は、先生方に相談してください。必ず適切なアドバイスがいただけるはずです。

みなさんご存知か知りませんが、埼玉大学アメリカ研究所属の先生方は、一流の研究者です。これは誇張でもなんでもありません。そのことこそが、埼大アメ研の大きな価値だと思っています。みなさんはアメリカ研究をするには、日本で一級の大学院に入られたのです。たとえ在籍期間が短くても一流のものに触れられる事はとても大事です。なぜなら、一流のものを知っていれば二流三流との区別がつきます。一流の思考方法や研究スタイルを知っていれば、それをお手本として、少しずつでも自分もそうしたやり方を身に付けることができるかもしれません。だから、先生方とどんどんコミュニケーションをとって下さい。

あと、私のように進学なさろうと考えている方へのアドバイスとしては、早め早めに修士論文を書いて下さい。そして、先生方の指導を何度も受けながら、少しでも良い論文を書いて下さい。

二年間を終えられたあと、みなさんそれぞれの場所で活躍をなさるのだと思いますが、埼玉大学での経験は必ずその後の人生にプラスになるはずです。いろいろなことに興味をもってどうぞ積極的な学生生活を送って下さい。

 

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埼玉大学でアメリカ研究を志された皆さんへ

折原淳一(千葉大・院)

 

僕は数年前に埼玉大学大学院の修士課程を修了し、その後、千葉大学大学院の博士課程に進学しました。専攻は修論以来ずっと日本人移民史です。早く博士論文を書けというプレッシャーを周囲からかけられています。学部時代は歴史学コースに在籍し、修士時代の指導教官も実は歴史学コースの先生でしたので、アメリカ研究コース出身ではありません。アメリカ研究に関しては他の方がアドバイスしてくださると思うので、僕は、雑多な話をいくつか・・・。

 

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 書籍代がかかるのも院生生活の特徴の一つです。できるだけ安く仕入れたいですよね。新刊書ならば、埼大生協で買うことが一番いいでしょう。店頭にない場合は注文をすれば(多少時間はかかりますが)入手できます。生協以外では巨大書店に行くといいと思います。僕の個人的印象では、アメリカ関係が豊富なのは三省堂神田本店ジュンク堂池袋本店です。三省堂は平均的に多くの本があります。ジュンク堂はマニアックなものと言うか、他の書店では入手できなさそうな本を買うことができます。リブロ池袋店もいいですね。埼玉大学の近くでは書楽(埼京線北与野駅前)とジュンク堂大宮店(大宮ロフト内)は県内でも一、二を争う巨大書店で、品揃えがよく、利用しやすいです。ただし、大きい書店ほど細かいジャンルに分けられています(例えば政治史や経済史に関するものは歴史関係のコーナーよりも政治経済関係のコーナーにあったりします)ので、想像力(?)を働かせて探してみてください。外国研究で必須なものは外国で出版された本です。僕の場合、洋書はもっぱらAmazon.co.jpです(このサイト内のリンクからどうぞ)。必要に応じてAmazon.comBarnes & Nobleなどを利用するといいでしょう。そういえば、Amazon.co.jpでもユーズド・コーナーができましたね。

 

 既に絶版・品切れの本がどうしても必要と言うことがよくあります。専門書の場合、そういうものが特に多いです。そうした場合、どうするか? 図書館というのも答えの一つです。が、非常に残念ながら埼玉大学の図書館でそういうものを調達することはかなり難しいです(紀要等の学術雑誌は書庫をあされば結構出てきます)。アメリカ関係に限定するならば、やはり東京大駒場キャンパスのアメリカ太平洋地域研究センター(アメセン)がいいと思います。それが専門ですから蔵書は豊富です。利用に当たってはまず先生方にご相談下さい。図書館に行く前に、アメ研の研究室にも多数の本があるので、その中を探すのもいいでしょう。せっかくあるのだから使わないと宝の持ち腐れになってしまうし。

 

 図書館以外に、古書店という選択肢もあります。近いところでは大学の前の大学書房はいいですよ。一度のぞいてみてください。専門書のみならず、文庫・新書類が豊富なことも嬉しいです(場所柄、各種テキストも・・)。安いし。アメリカ研究関係に限定するとちょっと難しくなりますが、神田の古書店街は歩いてみる価値はあります。総合的な品揃えは小宮山書店巌松堂、歴史系(西洋史)では南海堂書店、岩波書店出版物専門の山陽堂書店といったところでしょうか。アメセンのある駒場東大前駅(京王井の頭線)の駅前にある河野書店もいいですね。古本の場合、一日中歩いても空振りと言うことは珍しくありません。探している本がはっきりしていて、古書店で探しきれなかった場合は、インターネットを利用するといいと思います。古書店のサイトも数多いですが、とりあえず、東京都古書籍商業協同組合が運営する日本の古本屋や、オンライン古書店の老舗のインターネット古書店案内などが利用しやすいと思います。

 

※ほしい書籍を日本書籍出版協会が運営しているBooks.or.jp【本を探す】で検索してみて下さい。ヒットすれば新刊書店で買えます。なければ絶版・品切れと考えていいです。

   ※本に関しては『東京ブックマップ 2003-2004』(書籍情報社、2003)が詳しいです。図書館、専門図書館、大書店、古書店を含む専門書店の情報が詳しく出ています。ただし、東京23区が対象です。

 

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 現在、歴史を研究するにあたって、哲学思想系学問(特にポストモダン系)の影響を無視することはできません。歴史の理論的な部分の研究だけではなく、比較的オーソドックスな実証的研究にもそうした分野由来の理論や用語が頻出します。自分のテーマを追求する上で読まざるを得ない研究にそうしたものが出てくる以上、自分がそうした諸理論を使うか否か、或いは好むと好まざるとにかかわらず、ある程度そうした学問に触れておく必要があります。そうでないと理解できないものが少なくないですから。

 

 でも、哲学思想系学問は入り口も通るべき道もよく分からないのですよね、困ったことに。いわゆる「現代思想入門」みたいなものを読めば分かるかというと、反対に分からなくなることがしばしばです。この分野全体の概説書よりも、面倒なようでも特定の人物・思想なりを解説した本を読み、次にその人物が書いた本(論文)を実際に読むことを、自分の経験から、お薦めします。この分野はそれぞれ何らかの関係(理論の継承とか批判とか)がありますから、何となくでも把握できる思想家が一人でもいれば、それを梃子にして他の思想家・理論を理解しやすくなります(と言ってもやはり難解なことがしばしばですけど)。上記「入門」の類もこの段階になると、以前よりずっと分かるようになります。あまり深入りせずにいろいろと幅広く読んでください。それと、思想(岩波書店)とか現代思想(青土社)といった哲学思想系メディアでもアメリカ研究に関連することを論じる機会が多いので、たまには目を通すことをお薦めします。門外漢には難解に思える言葉をさらに難解に使う傾向が強いので、分からなくなることがありますけど、そのうち慣れてきます。

 

自分の興味がある分野から入るといいですね。興味がないのに読んでも退屈なだけですから。そのようなわけで特定の入り口(推薦書)をあげるのはちょっと難しいのですが、数年前に講談社から出版された「現代思想の冒険者」シリーズ(全31冊+年表1・いしいひさいちの漫画1)か、最近岩波書店から出た「思考のフロンティア」シリーズ(全16冊+別冊1)あたりが入りやすいのではないでしょうか。前者は超メジャーな哲学者ごと、後者はテーマごと(特定テーマの一般的な概説ではなく、著者の関心に大きく引きつけて書いている点が特徴)。また、新書サイズでも優れた概説書があります。興味関心を持った本から読んでみてください。

 

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 修士課程では2年間で学位論文を書くことになっています。が、この2年間という時間は、結構短いものです。学部時代の研究テーマを延長させる場合はともかく、新しいテーマで研究をしようという場合は最終的に時間との勝負になってしまいがちです。最初から急かせるようで申し訳ないですが、最初の1年間でどれだけ勉強を進めることができるかが2年間で満足のいく論文を仕上げるカギになります。最初は講義で忙しいでしょうが、頑張ってください。

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5つのアドバイス

山内 惠(ヤマウチ メグミ)

新入生の皆さま、埼玉大学そして大学院へようこそ!ご入学おめでとうございます。私は9年前に埼玉大学大学院を卒業しました。先輩の一人として、新入生の皆さまに5つのアドバイスをプレゼントしたいと思います。

 まず私の自己紹介をします。4年間(学士入学のため学部で2年間、修士で2年間)の埼玉大学在学の後、東京外国語大学の博士課程に進学。外語大で7年間在籍後2001年に卒業し、現在は「アメリカ史」、「アメリカ女性史」、「ジェンダー論」などの科目を非常勤で教えています。関心領域は、20世紀転換期の女性解放思想史、とくに一人の思想家―シャーロット・パーキンズ・ギルマンの「母性」思想を研究しています。

 

皆さまに送る5つのアドバイス

1,大学での勉強の基本は(和書も洋書も)「本を読むこと」。

2,ではどんな本を読んだら良いのでしょう。指導教官と相談して、自分の読むべき本

(読みたい本)のリーディング・リストを作成し、そのうえでアドバイスしてもらう

ことがベストです。

3,研究室は、アメリカ研究関係の本と情報の宝庫。本棚の本のタイトルを見て興味がわいたら、遠慮せずとんどん借りて読んでみましょう。

4,英語力(特に読む能力)は絶対に必要。私も苦労しました(今でも苦労しています)。英語力のアップには、「習うより馴れよ」、これしかありません。自分の専門分野の書をとにかくスピードをあげて読めるよう努力あるのみです。

5,(私も含めて)先輩の体験や知識はおおいに利用すべし。私もたくさんの先輩からアドバイスしていただき、失敗談も聞きながら、成長させてもらいました。

 

これまでたくさんの本と出会いましたが、とくに印象に残った本、5冊だけ書きます。ぜひ読んでいただきたい本です。

 

@ 有賀夏紀『アメリカ・フェミニズムの社会史』(勁草書房)

ご存じアメリカ女性史を学ぶための「バイブル」的存在の本。巻末の文献リストも必読。リストから自分の興味のある分野の本を探すことも可能。

A     有賀夏紀『アメリカの20世紀』(中央公論新社)

なぜ「20世紀はアメリカの世紀」と呼ばれるようになったか。現代のアメリカ型資本主義経済に依る消費社会のルーツを知るための、最適の書。この書の文献リストの利用もおすすめです。

B     Carl N. Degler, At Odds: Women and the Family in America from the Revolution the Present (Oxford University Press)

私の研究に決定的影響を与えた本です。デグラー先生は有賀先生のスタンフォード大時代の先生。

C     野村達朗編著『アメリカ合衆国の歴史』(ミネルヴァ書房)

アメリカ史の概説書はたくさんあるけれど、この書はコンパクトでかなり読みやすい。女性史の扱いが少ないのが欠点です。巻末の文献リストもグッド。

 

D     大橋洋一 『新文学入門―T・イーグルトン「文学とは何か」を読むー』(岩波書店)

文学理論というよりも、思想史の背景を知るための、構造主義からフェミニズム批評までの入門解説書。歴史を学ぶ学生もこれくらいの思想史的知識は必要だと思います。イーグルトン自身の『文学とは何か』も難解ですが、読む価値はあるので挑戦してみてください。

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アメ研仲間を活用しましょう

数年前に修士を卒業、ML/HP管理部担当してます管理人#1です. 有益なアドバイスがすでに出揃っており、多少重複してしまいますが、大学生活から得た教訓を簡単にメッセージにいたします。(大学生活で最終的に一番助けられたのは、先生方をはじめとするアメ研仲間です. 次のライフステージに向けて、お仲間を通しての得がたいものを見つけられますよう、心から願っております.)

   ●大学生活の基本「勉強」→本や資料を読む/(考える)/議論する/書く(≒書き直す)こと

   ● 読むこと:どんな本/資料を?→読書リストを作ろう(指導教官のアドバイスもゲット!)

       →研究室は情報の宝庫. 興味が湧いたら借りて読みましょう..

          洋書は読み馴れるまで少し辛抱、がんばりましょう.

   ●資料や本探しの達人になりましょう:先生/先輩からのアドバイスは高性能!

   ●議論を楽しみましょう:研究室の雑談やゼミは思考を磨く議論の場. 大いに楽しんで活用しましょう. シンポや講演会、他大学のゼミ参加でさらに磨きを.

   ●自分の関心テーマをクリアに:書くときにしばしば痛感することなので、書いたものを他人に読んでもらいコメントをもらったり、議論を通しての自己相対化作業などで対応します.

   ●わからないことがあったら? :一人で考えて答えが見つかればラッキー。そうでない時は、納得がいくまで、周りの人たち(先生や先輩/仲間)と話してみましょう. きっと何か得られるはず.