2001年11月2日
講義・演習に於ける学生参加に関して
於:教育方法を考える会
1.講義・演習の構成における基本的な考え方
@学生の学習意欲を高める。
A学生の専門知識の増大、思考能力の向上。
B予習、質問、レポート等の学生の努力に対しては、必ずフィードバックを与える。
@、A、Bは、車の両輪(三輪?)。相互強化的に働く。学生の参加を進めることは、@ABいずれの意味でも重要。
2.学生参加の形態と評価システム。(資料1)
〔学生参加の形態〕
@教官から学生への質問
A学生からの質問
B学生どうしの討議
C学生の発表。
☆(学生の学習意欲の触発に重点を置いた入門レベルの講義は別として)本気で学生自身の学習意欲の向上を望むのであれば、「予習」をさせる必要がある。予習によって、学生側の「予備知識の準備」と、「不明点の解明という知的飢餓状況」が醸成され、「学生の講義・演習への参加意欲」を高めることが可能になる。この予習を確実にさせるには、それに対応した「評価システム」が必要である。
☆すなわち、評価システムは、成績評価のためだけではなく、予習を担保し、学生の達成度を学生自身に自覚させることに大きな目的がある。(このため毎回の小試験のレベルは、予習すればほとんどできるが、予習してこなければできない水準・・・つまり、かなり易しいレベル・・・に設定する必要がある。本気で到達レベルを測る試験をすると、学生を意気阻喪させる可能性がある。)
☆「予習」と「評価システム」を強化すると、教養学部の場合、(必修ではないので)学生は他の単位のとりやすい科目へ逃げる可能性が高い。学生には頻繁にフィードバックを与えて自己達成感を高めるように努力する必要がある。
3.学生参加の講義別の事例。
@入門的科目(専門基礎:国際経済論A, B)(資料2)
・minute paper(重要点と質問記載−回答)
・テクニカルタームに関する課題発表
A専門科目(基礎演習、ミクロ経済、マクロ経済T、U)(資料3,4 映像資料)
・予習と質問(評価方式、担保としてのquiz)
・アクティビティ
B演習(国際関係論演習(国際経済))(資料5,6)
・予習
・電子メールによる質問提出
・学生同士のディスカッション
・2年目学生によるチュータ
4.学生参加の効果と問題点等
・現在の方式は、それなりに効果を上げている。学生の学習意欲も高めていると考えられる。
・シラバスや初回の講義、学生の噂などで事前に情報を伝わっているので、参加する学生はある程度の覚悟をして講義・ゼミに臨んでいる。このため、学生の負担が大きい(専門基礎を除く)割りに中途脱落者は比較的少ない(1割程度か)。
・一般の講義(専門基礎など)で、学生参加の時間(学生の質問に答える時間や学生が発表する時間)を取ると、実質的な講義時間が大きく制約される。入門的な講義では、講義で与える知識量はある程度諦め、学生の学習意欲を刺激する方を優先している。(より多くの専門知識の授与は、中級以上の講義・演習で行う。)
・試験問題の準備等、教官側にとっての初期コスト(最初の年の準備)が高い。
・学生からどのような質問がでてくるか分からないこと、限られた講義時間で要領よく説明する必要があるため、事前の準備が必須。教官側の負担も小さくない。
5.展望
・非常勤で教えている他大学での経験から考えて、埼玉大学で将来もこの方式での運営が継続できるかどうかは不明。(→もし現在の方式で運営できなくなれば、レベルを学生の水準に合わせて落とす。)