このプロジェクトでは次のような研究活動をその対象範囲と考えています。
1.社会科学における計算手法の導入に関する文献研究
 人工社会、社会人類学、進化心理学の研究における現状の知見をサーヴェイし、あわせて情報科学としての位置づけを検討する。(2002−4年度)
2.進化型シミュレーションによる、人間の(「未開」)社会の秩序の再現
 基本的な社会特性のうち、協力性、利他性、社会的交換、集団形成、分配規範の成立などのテーマについては申請者らが実施したプログラムが存在する。それらの経験の上に立って、2002−3年度には簡単な reputation メカニズムを仮定して権力の発生、生業の分担(分業)などの特性再現のシミュレーションを実施する。2004年度には以上のメカニズムを総合し、計算上の2次元空間に単純な社会を再現するシミュレーションを試みたい。
3.進化心理学の知見(人間特性)の計算上の再現
 この作業は上記2と並行して実施することになる。同じ作業を「どのような社会秩序が生じるか」の観点で眺めたのが2の作業であり、「いかなる戦略が進化するか」という観点で眺めたのが3の作業である。
4.人間被験者を用いたシミュレーションゲーム実験の計算モデルへの移行
 人間被験者を用いたシミュレーションゲーム実験で生じる典型的結果については申請者らに経験がある。そのゲーム構造を計算モデルに移植し、エージェントに heuristics(単純な戦略)を仮定してシミュレーションを実施し、典型的な結果が再現できるか否かを検討する。(2003−4年度)
5.上記4の副産物としてシミュレーションゲームのプログラムができるはずである。そのプログラムを利用し、ネットワーク上で稼動し、汎用的に状況が定義できる(資源問題、廃棄物問題などに課題を変更できる)シミュレーションゲーム実験用のプログラムを開発する。(2004年度)

メール アイコン
直線上に配置