論文の技法
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モン・サン・ミシェル修道院と修道院の回廊(フランス・ノルマンディー) |
A)まず、論文を完成する上で重要な「注」と「参考文献表」の作成技法について解説します。
【注について】
1.どのような箇所に注をつけなければならないか。
次のような箇所には注が必要です。
(1)史料を引用した場合
(2)先行研究の仮説、見解を用いる場合
(3)補足説明が必要であるが、本文中に書くと叙述の流れを妨げる場合
(4)特殊な概念用語を使う場合、あるいは原語をそのまま使用する場合
2.注の書き方
(1)注の番号は、史料からの引用、先行研究の仮説、見解、事項、用語などの終わった箇所、あるいはその文章の終わりにつけます。
(2)引用は、引用符(一重カギ「 」、欧文なら“ ”)で囲み、引用中の引用は二重カギ『 』で囲みます。
(3)引用した史料あるいは先行研究の出典を記すにあたっては、最初の時点で、著者名(あるいは史料編纂者名)、書名(あるいは史料名、論文名)、雑誌名、巻号、出版年、頁にいたる完全な情報を記載しなければなりません。→B参照
(4)同一文献をくり返し引用する場合は、最初の引用の際に出典の完全な情報を提示し、同時に「以下、○○と略記する」と省略の仕方を明示しておけば、2回目以降は省略形で引用することができます。
(5)他に略号としては、次のようなものがしばしば用いられます。
「同前」あるいは「同上」(欧文では ibid.)……直接先行する注と同じ場合
「前掲書」あるいは「前掲論文」(欧文では op.cit. / art.cit.)……直接先行しないが、前にあげたことのある文献の場合で、著者名を記してそれに続けます。
*なおibid. / op.cit. / art.cit. はすべてイタリックもしくは下線で表記します。
【参考文献一覧について】
参考文献一覧表は、論文で用いた文献について、分類・整理した上で作成します。基本的には、次のような分類を念頭に、各自、論旨に沿って分類するとよいでしょう。
「一次史料」(基本史料)
「二次史料」
「本論のテーマについての先行研究(書物)」
「本論のテーマについての先行研究(論文)」
「本論のテーマと関係の深い研究(書物)」
「本論のテーマと関係の深い研究(論文)」
B)次に引用文献の記載形式について標準的なスタイルを示しておきます。カッコの使い方などにも注意。「参考文献一覧」に列挙する際は、著者名の五十音もしくはアルファベット順に並べるのが原則です。
◆単行本(日本語・中国語)◆ @著者名 A書名 B必要に応じて全集・叢書名など C出版社 D初版刊行年
[例]大貫静夫『東北アジアの考古学』世界の考古学9、同成社、1998年。
若桑みどり『戦争がつくる女性像―第二次世界大戦下の日本女性動員の視覚的プロパガンダ―』筑摩書房、1995年。
◆論文(日本語・中国語)◆ @執筆者名 A論文名 B掲載雑誌・論集名 C巻・号 D刊行年
[例]小野山節「三角縁神獣鏡の鋳造法と同笵鏡」『史林』81巻1号、1998年。
高畠純夫「古代ギリシアの外人観」弓削達・伊藤貞夫編『ギリシアとローマ―古典古代の比較史的考察―』河出書房新社、1988年。
◆単行本(外国語)◆ @著者名(姓を前に) A書名(欧文の場合はイタリック) B出版地、あるいは出版地+出版社 C初版刊行年
*翻訳がある場合はカッコ内に(D訳者名E邦訳書名F出版社G邦訳初版刊行年)
[例]Kantorowicz, Ernst H., The King's Two Bodies : A Study in Mediaeval Political Theology, Princeton: Princeton University Press, 1957(小林公訳『王の二つの身体―中世政治神学研究―』平凡社、1992年).
彭信威『中国貨幣史』上海群聨出版社、1954年。
*イタリックのフォントがない場合は書名部分に下線を引く。
[例]Pollock, Susan, Ancient Mesopotamia : The Eden that Never Was, Cambridge: Cambridge University Press, 1999.
◆論文(外国語)◆ @執筆者名 A論文名 B掲載雑誌・論集名(欧文はイタリック) C巻・号 D刊行年
[例]Lefebvre, Georges, “Foules revolutionnares”, Annales historiques de la revolution francaise,1932(二宮宏之訳『革命的群衆』創文社、1982年).
張朋川「河西出土的漢晋絵画簡述」『文物』1986年6期。
*イタリックのない場合は前項と同じく下線で表記する。