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調査報告
第二章
秩父の観光 〜インタビュー調査を通してわかったこと〜


迫本紀美子
  1.はじめに
2.調査の結果
  3.考察
  4.おわりに



2.調査の結果

(1)市役所観光課職員(2名)
 旧秩父市の観光客は、年間約150万人だったが、芝桜がヒットして、平成15年は約220万人、平成16年は、約260万人だった。観光客は日帰り客が多い。形態は、家族旅行から、社員旅行へシフトしている。季節的には、春は芝桜、秋は紅葉や温泉、礼所めぐりなどが人気がある。冬は少なく、氷をつかったものを企画している。
 秩父の産業として、観光のみで暮らしていける人はわずかである。第2次産業が主であり、秩父セメントや秩父織物、キヤノン電子などに従事している人が多い。第1次産業は少ない。
 首都圏から約70Kmと、てごろな距離であり、土日のハイキング客などのリピーターが多く、帰りに野菜などを買って帰る人も多い。中高年のハイカーも多く訪れる。札所めぐりは、約年間50万人訪れ、遠方からやってくる。だいたい3泊4日程度宿泊される。また、NPOとの連携もはかっており、音楽会と花、温泉などで、観光を誘致している。
 秩父の特性として、平地が少なく、土地の価値が高い。また、地盤がしっかりしており、災害が少なく、安全な土地である。

(2)民宿の従業員
 宿泊客として、カップル、ファミリー、ゴルフ、山岳客も多い。あとは、将棋、俳句、釣りなどの客もいる。都内から来る客が一番多い。あとは、埼玉、千葉、栃木、群馬、茨城などからも来る。夏休み期間中は、合宿の利用客が多い。市周辺の大型スーパーの開店に伴い、ビジネス客などの宿泊も多かった。西武線が開通して観光客が増えた。西武線の存在はかなり大きい。
 秩父の観光について、温泉地でないことが弱いと思う。秩父の売りは、自然、渓谷、札所、あじさい寺、はぎ寺などである。自然を破壊しないで、観光資源を作っていく必要があると思う。また、秩父は昔ながらの観光地ではない。秩父観光の課題として、秩父の特色を作っていかなければならない。

(3)市役所観光課職員
 秩父市は、これからも観光を進めていかなければならない。秩父市の観光資源は、これというものがなく散在しているが、それを武器にしていきたい。また、「普段着の観光」を働きかけており、秩父市住民の飾らない文化、普段着の文化でやっていきたい。また、少人数でも、各々のニーズに応じた観光を行なっていきたい。例えば、ガイドを連れて森歩きなど、体験、本物志向の観光である。ターゲットは子供である。それは、周囲の人へ広がることが期待できるとともに、将来的なリピーターへとつながるからである。財政的なことを考えると、本物志向のツアーだけでは成り立たないので、大人数のツアーと同時進行でやっていかなければならない。そして、お金を多く落としてくれる上質の客を多く呼ぶことが必要である。

(4)道の駅ちちぶ・販売員(2名)
 売れ筋商品は、しゃくしな漬である。他には、地酒なども良く売れる。客層は、女性が多い。バスやマイカーでくる観光客が多い。

(5)秩父地域地場産業振興センター、物産振興課職員
 観光客は、関東近県から、マイカー、公共交通、団体バスでやってくる。かりさかトンネルが開通してから、団体観光バスを使って、福島や山形からの観光客が増えた。一番多いのは、関東近県からの客である。
 売れ筋商品は、しゃくしな漬で、あとは、豚肉の味噌漬け、地酒などが、7.5から8割の売り上げを占める。地元の客も来るが、観光客の方が多い。一人当たりの単価は、1.350円くらい。宅配もやっており、年間約5,000万円の売り上げがある。道の駅との競合もあり、観光客は減少するだろう。道の駅は、ブランドがあり強い。市や西武も観光を盛り上げようとする動きもある。イベントや、ばら売り、ギフト、宅配、ネット販売などは、地場産は優位である。宅配は、年間5千から5千5百件やっており、お歳暮、お中元もやっている。ターゲットは、団塊の世代で、ネクタイフェアを行ったり、久留米がすり、つむぎなども売り出している。アミューズパークがオープンしてからは若い人も増えた。また、土産物として商品化はしていないが、秩父の人にはホルモンが好まれている。
 秩父音頭に、自分たちはこう考えるけど、おかしかったら笑えというものがある。これは、秩父の閉鎖的な感じを表している。昔は、別に観光客が来なくてもいいという考えであったが、最近は受け入れる余裕が出てきた。

(6)秩父地域地場産業振興センター、物産振興課職員
 観光客は、埼玉県内、神奈川、東京などが多い。静岡や福島からもバスでの観光客が来る。観光客の年齢層は、40〜60代後半が多い。特産品の売れ筋は、しゃくしな漬が一番人気である。豚に肉の味噌漬けや、野菜もよく売れる。地元の住人も買い物にくるが、観光客の方が多い。お客さん1人当たりの単価は、1,100円くらい。お客さんの購買意欲を増すために、試食販売や、お祭りの時の出張販売をやっている。あとは、大型バスの団体客向けにパンフレットなどを作成し、配布している。

(7)秩父地域地場産業振興センター、販売員
 こちらは、秩父の観光客の休憩所として使われている。バスから降りて、アイスクリームを食べたり、トイレを使ったり。売れ筋商品は、しゃくしな漬、秩父にしき、そば、モナカなどである。客層は、あらゆる年齢層の人が来る。

(8)西武秩父駅仲見世通り商店街、味噌屋販売員
 売れ筋商品は、しゃくしな漬である。観光がなかったら秩父は成り立たない。お客は地元の人はスーパーへ行くので、観光客しか来ない。西武鉄道の開通で、ここは拓けた。秩父は温泉もダメだし、芝桜くらいしか見所がないと思う。ながとろは、1年中人がいるが、ここは冬には観光客はあまり来ない。

(9)西武秩父駅仲見世通り商店街、駄菓子屋販売員
ここの商店街は、10年くらい前から整備された。秩父の観光は大切で、なくなると困る。見所はながとろで、四季折々の自然が楽しめる。市長には不満はないが、今後については、不安がある。しかし、行政が一生懸命にやってくれているので、期待したい。具体的には、何をしているのか分からない。

(10)西武秩父駅仲見世通り商店街、そば屋店員
 売れ筋は、やはりおそば、日本酒、味噌、漬物。そばは、各農家が石臼で作っていた。そばの他には、味噌、しょうゆなどを作っていた。交通が不便なので、自家用に作っていた。荒川では、年に1度そばの試食会がある。観光客は、8割方は電車で来た観光客で、2割が地元の客。秩父は、位置的に離れ小島であり、観光がなくなると秩父は成り立たない。
 秩父の魅力は、春は芝桜、夏はながとろ、秋は紅葉、冬は特にない。札所やゴルフは観光客が減っている。行政や、観光協会などは、観光開発に取り組んでおり、閑散期などのイベントなどを企画している。客層は、夏は家族連れが多いが、彼岸には高齢者が多い。来て欲しい客層は、20代から30代の客。秩父の人はとてもやさしく親切だと思う。

(11)西武秩父駅職員
 鉄道を利用する客は、池袋駅が多い。あとは、所沢、入間市。シーズン的には、芝桜の時期は多いが、12月3日の夜祭以降は減る。冬は少ない。5、6年前は、札所巡り、ハイキングも盛んだったが、減ってきている。夫婦の客などは、行き先を決めずにふらっと来て、行き場所を探すケースも多い。こちらで色々ご案内するが、まかないきれない時は、すぐそばの県の情報館へご案内している。パンフレットなどで、観光アピールをしている。電車の客は日帰りが多く、宿泊する人は少ない。各町村に1件温泉があり、日帰り温泉の客が多い。秩父の産業はあまりない。秩父の売りは、素朴さ、純朴さだと思う。秩父の人は、観光客の受け入れは良いと思う。
 行政は、ポスターなど町中に投資している。有力者がよいアイデアを出してくれると助かる。3、4年前から、鉄道の本数も40分に1本から、30分に1本へ増便している。

(12)西武秩父駅仲見世通り商店街、織物屋販売員
 お客さんは、西武線沿線の電車で都内から来る人と、観光バスで来る人がいる。客層は、中年の女性、年配のご夫婦、男性のみの団体客などが多い。若い人は、ここではあまり買わない。売れ筋は、秩父銘仙、しゃくしな漬、うどん、そば、こんにゃくなど。名所は、芝桜、観光バスのコースには必ず入っている祭り会館。冬は見るところがなく、閑散としている。秩父の魅力は、ながとろのライン下り、紅葉、桜、荒川など。
 秩父のお土産物屋さんは、観光がなくなったらやっていけない。私たちは、市の活動は、あまり分からない。西武鉄道と仲見世の人が月に何度か話し合っているが、市役所は関わっていない。


入込観光客数(推計)の推移  (単位:人)
総数 秩父市 秩父郡
昭和53年 7,763,300 2,176,000 5,587,300
54 7,256,000 1,763,000 5,493,000
55 7,787,700 1,796,000 5,991,700
56 7,664,800 1,795,000 5,869,800
57 7,578,400 1,760,000 5,818,400
58 7,502,400 1,673,000 5,829,400
59 7,642,200 1,754,000 5,888,200
60 7,462,900 1,689,400 5,773,500
61 7,554,500 1,694,200 5,860,300
62 7,740,900 1,696,300 6,044,600
63 8,014,600 1,699,300 6,315,300
平成元年 8,458,200 1,793,500 6,664,700
2 9,116,100 1,898,400 7,217,700
3 8,880,700 1,694,700 7,186,000
4 9,215,800 1,670,800 7,545,000
5 9,196,100 1,640,400 7,555,700
6 9,450,400 1,725,800 7,724,600
7 9,757,100 1,641,900 8,115,200
8 9,656,400 1,572,000 8,084,400
9 9,155,200 1,506,400 7,648,800
10 8,850,100 1,490,400 7,359,700
11 9,138,500 1,574,900 7,563,600
12 8,230,100 1,509,800 6,720,300
 資料:秩父市市役所観光課


秩父地域地場産業振興センター:物産館売上状況            (単位:千円)
年度 売上高 営業日数 一日平均売上高
平成5年 301,714 311 970
6 306,463 304 1,008
7 322,280 311 1,036
8 320,469 310 1,033
9 316,835 310 1,022
10 379,833 318 1,194
11 392,158 357 1,098
12 355,298 354 1,003

 資料:秩父地域地場産業振興センター

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