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調査報告
第一章
秩父における観光の問題点


杉村洋平
  1.はじめに
  2.調査の概要
3.調査の結果
  4.聞き取り調査の結果に対する考察
  5.まとめと今後の課題



3.調査の結果


3−1.秩父市産業経済部観光振興課職員に対する聞き取り調査の結果

 観光振興課職員(B氏、H氏)に対する聞き取り調査では様々な話を聞くことができたが、紙面の都合上今回の調査に関係ある部分の要点のみを以下にまとまる。
“花と緑と音楽“というスローガンを設け、それにあわせた施策を行っている。例えば羊山公園に芝桜を植え、観光客を誘致した。年に150万人だった観光客が、芝桜を植えて以降、年に240万人になった。
子供をターゲットに戦略を立てている。荒川沿の学校に出向き、『秩父観光出前講座』を行っている。現在は中高齢の観光客が多いが、媒体に秩父が掲載されると若い人も来る。
秩父のイメージ作りは、水、森、農村景観を重視している。何でもない所、気づかなかった所が実はおどろきになる、と認識している。また、住民一人一人が観光資源である。
秩父は中途半端な田舎のため、観光だけに頼っているわけではない。(産業などにも力を入れている。)


3−2.住民に対する聞き取り調査の結果

 各氏への聞き取り調査の結果を、質問ごとに以下にまとめる。今回の調査では、調査協力者のことばをそのまま記すのではなく、筆者によって編集し要点をまとめている。
【A氏】
民宿従業員(女性)

問1.秩父地域の特色・売り
回答.特色は養蚕農家と、山や川などの自然のみ。見所はない。甲府など他の観光地と異なり、遊びようのない所。
問2.もし秩父地域から観光産業がなくなったとしても、なんとかやっていけるか?
回答.無理だろう。西武線が開業して以来、観光客が来るようになった。今では観光がなければやっていけない。
問3.行政は秩父の観光に関して十分な施策を行っているか?
回答.がんばってはいるが、一貫性がなく、いわゆるハコモノ行政と施策がかみあっていない状態。うまくいっていない。
問4.今後、秩父地域の観光産業はどのようになってゆくと思うか?
回答.秩父は箱根などのような温泉地帯でないので弱い。他の観光地のように特色をもっと出すべき。例えば甲府なら果実、川越なら町並み、白川郷なら家屋と温泉、というように、もとからあるものを整備して打ち出し、成功している。秩父がどうすべきか、むしろこちらが教えて欲しい。
その他の話
秩父織物は売れなくなった時に化学繊維を混合し始め、伝統としても実用的な商品としても価値がなくなり、生き残ることができなかった。


【B氏】
職業秩父市観光振興課職員(男性)  ※尚、3−1のB氏と同一人物である。

問1.秩父地域の特色・売り
回答.物見遊山から、体験志向へニーズが変化している。そこで、現地のガイドと一緒に森の中を歩いたり木を切ったりする学習体験に力を入れている。様々な観光スポットがあり、魅力の散在が観光客誘致における武器となる。
問2.もし秩父地域から観光産業がなくなったとしても、なんとかやっていけるか?
回答.危機感をもってやっている。
問4.今後、秩父地域の観光産業はどのようになってゆくと思うか?
回答.上記体験学習や子供に対するアプローチ等により、良い客を積極的に呼び込みたい。待っていても客はこないため、攻めの姿勢が必要。
その他の話
「普段着の観光」という意識を年頭に置いている。飾りの無い姿が秩父の良さと考える。
体験学習、エコツーリズムなどに力を入れている。今後観光というものは個人の好みに特化した方向に進むと思われる。その意味で、秩父を好きになってくれる良い客をターゲットとしているが、既存のマスツアーも現段階では当然必要である。
(問3. 「行政は秩父の観光に関して十分な施策を行っているか?」行政当事者のため質問を省略。)


【C氏】 
秩父地域地場産業振興センター物産振興課職員(男性)

問1.秩父地域の特色・売り
回答.秩父の売りは野菜。特にしゃくし菜。
問2.もし秩父地域から観光産業がなくなったとしても、なんとかやっていけるか?
回答.だめだろう。
問4.今後、秩父地域の観光産業はどのようになってゆくと思うか?
回答.今後会社を退社したり時間ができる、団塊の世代を狙っていきたい。いつでも過渡期であるから、現状に満足せずにがんばってゆきたい。
その他の話
最近は秩父に来る観光客の在住地の範囲が広くなった。ただ、秩父を素通りして他の地域まで行ってしまう観光客も増えた。日光や箱根などはやはり強い。

【D氏】 
商店街内商店従業員(味噌屋・女性)

問1.秩父地域の特色・売り
回答.秩父には売りがない。特に温泉がないのが辛い。売り・見所といえば最近できた羊山公園の芝桜くらいか。だから冬になると観光客はさっぱりいなくなる。長瀞のように一年中客が来て欲しい。
問2.もし秩父地域から観光産業がなくなったとしても、なんとかやっていけるか?
回答.観光がなくなったら秩父は駄目だろう。
問3.行政は秩父の観光に関して十分な施策を行っているか?
回答.よくやってくれている。
その他の話
秩父は西武秩父駅が開業してから観光地として成立した。

【E氏】 
商店街内商店従業員(菓子屋・男性)

問1.秩父地域の特色・売り
回答.長瀞が見所。特産品は織物と石灰。
問2.もし秩父地域から観光産業がなくなったとしても、なんとかやっていけるか?
回答.秩父は観光でもっているため、無理だろう。
問3.行政は秩父の観光に関して十分な施策を行っているか?
回答.がんばってくれている。不満はない。
問4.今後、秩父地域の観光産業はどのようになってゆくと思うか?
回答.今後どんな方向性でいくのかがとても重要になる。

【F氏】 
商店街内商店従業員(蕎麦屋・男性)

問1.秩父地域の特色・売り
回答.特産品は蕎麦と地酒。観光地としての売りは四季折々の景観。
問2.もし秩父地域から観光産業がなくなったとしても、なんとかやっていけるか?
回答.秩父は観光でもっているため、無理だろう。
問3.行政は秩父の観光に関して十分な施策を行っているか?
回答.市はがんばってくれている。
問4.今後、秩父地域の観光産業はどのようになってゆくと思うか?
回答.20〜30代の、若いお客さんが増えてくれると嬉しい。

【G氏】 
西武鉄道西武池袋線 西武秩父駅駅員 (男性)

問1.秩父地域の特色・売り
回答.素朴さが売り
問2.もし秩父地域から観光産業がなくなったとしても、なんとかやっていけるか?
回答.観光がないと厳しいだろう。
問3.行政は秩父の観光に関して十分な施策を行っているか?
回答.不満はない。
問4.今後、秩父地域の観光産業はどのようになってゆくと思うか?
回答.芝桜が有名になって以降、西武鉄道の利用者は増えてきている。今後も観光客は増えると思われる。それに加え、以前からの産業は斜陽なため、ますます観光が重要になってゆく。
その他の話
近年の規制緩和により、秩父にも「温泉」ができた。

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