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調査報告
第一章
秩父における観光の問題点


杉村洋平
  1.はじめに
  2.調査の概要
  3.調査の結果
  4.聞き取り調査の結果に対する考察
5.まとめと今後の課題



5.まとめと今後の課題

 今回の調査協力者は全員、何らかの形で観光産業に関わっている。そうした人々に対する聞き取り調査の中で見えてきたのは、住民自身が秩父の観光地としてのイメージの確立を望みつつそれが成就されていないという問題であった。
  また根本的な問題として、地域の人々は秩父に観光は必須であると認識しており、そのため今後の観光戦略を重視している。H氏の「秩父は中途半端な田舎のため、観光だけに頼っているわけではない」という発言はこれと意を異にするようにも思えるが、その反面H氏およびB氏は地域観光振興を非常に戦略的に捉えており、そこには二面性が見られる。ただし上記の通り、イメージの確立に関して施策と市民の間に意識の差異があることは特筆に価する。
 またこれには、住民の意識の中で観光客誘致とは誰が・何が為すものか、という問題が絡んでくる。今回の調査協力者には、行政の具体的な施策は十分に浸透していなかった。しかしそれを行政の説明不足や情報開示方法の責任にするのは早計である。人々の意識の中で観光客誘致は施設や施策が行うものではなく、自然などの資源の総体や特徴的な観光資源(顕著なのは温泉)による観光地のイメージと、観光客のそれらに対する一定の認識が行うものだと考えられており、彼らは行政の施策を最重要と考えていない、ということも要因の一つとして挙げられる。
 更に、秩父に住む人々が意識している問題とは異なるが、今回の調査の中で見えてきた問題の一つに、秩父地域の範域の問題がある。今後長期的かつ総体的に秩父の地域振興を考える上では、重要な問題となると考えられる。
 今後の課題としては、上記の問題を更に深く論じると同時に多方向から検討する資料の採集の必要性が挙げられる。例えば、今回の調査協力者は全員何らかの形で観光産業に関わっている。観光産業を、秩父地域の中のあくまでも一要素と位置付けるのであれば、当然観光に携わらない人々についても考える必要が出てくる。あるいは、秩父の範域の問題を取り上げるには、長瀞町、旧村部等、秩父市中心地以外および秩父市周辺の人々についての検討も重要となる。今後は、今回指摘した問題点、また更に発見されるであろう問題点を踏まえた検討が必要である。
 











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