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調査報告
第五章
地域振興における秩父ミューズパーク
〜現状と課題に関する研究・調査報告〜


左海絢子
  1.はじめに
  2.秩父ミューズパークの概要
  3.調査調査
  4.調査結果の考察
5.まとめ



5. まとめ

 今回の調査によって、秩父ミューズパークの現状が明らかになり、と同時にいくつかの問題点が明らかになった。まず、現状としては、秩父地域のリゾート核施設として整備されたミューズパークが、現在では主に秩父地域住民の日常的利用と、広域圏の人々による年数回の季節的な利用双方に利用されていること。秩父地域の人も、広域圏の人も、このミューズパークを自然と触れ合える場所として魅力を感じていることがわかった。秩父地域に住んでいても、やはり住宅地には豊かな緑がないということだろうか、ミューズパークの魅力を「自然」、と答えた地域住民が思いのほか多かったことが驚きであった。
地理的に秩父地域の中心であることに加え、空間的な広がりも十分に持つミューズパークは、防災の拠点としてだけでなく、秩父地域の活動の拠点として活用されなければならない。県営である以上、公園の活性化と地域の活性化の問題は別に考えられてしまう。地域振興までをふまえた公園利用がなされるには、今後の運営主体の取り組みに加え、秩父市、地域住民の積極的な取り組みがかかせないだろう。
また、公園の利用が日常的であるのに対して、園内の音楽施設の利用についてはあまり前向きな意見が聞かれず、十分な活用が図られていないことがわかる。音楽堂ではコンサート等の催し物が割合頻繁に行われているようではあるが、そのことがどれだけ地域の住民に伝わっているのだろうか。イベントの情報が自然と耳に入る、という人、ほとんど伝わってこないし、看板も出ないのでよくわからないという人両方の場合があり、秩父地域内での居住地にもよるのであろうが、両極端であると感じた。しかし、広域公園である以上、周辺地域はもちろん、地域外の住民に対しても幅広い広報活動をすべきではないかと思う。
調査によって滞在時間が短いことが明らかになったが、公園の利用としてはそれ自体が問題ではない。滞在時間が延びたり、来園者数が増えたところで公園の有料施設の収益が上がるわけではないということは、常にこのミューズパークが抱えてきた問題点である。公園内での消費を促すことは容易ではないが、既存のレストランや売店を活用して秩父の特産品を使ったメニューを提供するなどの試みが積極的になされるべきではないだろうか。   
ミューズパーク内は広く、施設が分散して使いにくいという問題点もあげられているが、公園の一番端にある農産物直売所が、音楽施設や、観光客が散策を楽しむ公園の中心部にあったなら、より多くの人に利用されることになったと思う。
今現在公園の利用は一般的な公園同様、散策やウォーキングなど、自然と触れ合うこと・歩くことに重点をおいた利用がなされている。今後は訪れた人に秩父の自然だけでなく、同時に秩父の特産物や名産品を知ってもらう機会を積極的に生み出していくことも必要であるだろう。
今後管理が指定管理者に移行されて以後、積極的に自主企画・地域への開放が行われることが期待される。しかし、県営であることの限界を、指定管理者によって乗り越えられるという安易な期待を持つことはできないのは明らかである。

調査にあたっては、同じ秩父市内に存在する公園でありながら、地域住民によるボランティア活動が活発に行われ、秩父の観光の拠点として大きな注目を集める羊山公園との比較を行うことも必要であったと考えられる。アクセスの利便性の違いだけではなく、秩父市と市民の積極的な取り組みが働いたことがミューズパークとの違いを生み出しているのではないだろうか。今後のミューズパークの活性化を考える上では、羊山公園の運営状況との比較をし、参考にしていくことも重要であった。
 更にミューズパークの広大な敷地を活かして季節の花を植える秩父市の取り組み、西武の撤退問題への対策などを含め、秩父市がこのミューズパークを今後どう活かしていこうと考えているのか秩父市へのヒアリングを行う必要もあったと思う。
 
今回のアンケート調査は秋に行ったため、公園内は美しく色づいていてそれを目当てに多くの人が訪れていた。本研究報告書の中で使われている写真は夏に撮影したものであるため、緑が生い茂り眺めが良い。春はまた花々が咲き誇ることだろう。年間を通じた利用の促進を図るためには、冬季の間どのように活用するかを考えなければならないが、スポーツの森が運営していたスケート場はすでに閉鎖している。
 花や緑を魅力の第一条件にしている以上、冬の間の問題を乗り越えることはできない。これは秩父の観光全体における問題でもあるのではないだろうか。ミューズパークの活性化と秩父地域の活性化を一体的に捉え、相互に補完しあう取り組みが行われるべきである。  
また、地域住民と地域外住民が、同じ場所で同じ時間を同じように過ごす場所としての特徴を活かし、秩父の住民と観光客が一緒になってミューズパークの活用を図るための取り組みが、今後行われていく必要があるのではないだろうか。




参考文献
「秩父リゾート基本計画−気軽にゆっくりと楽しめる別天地−」埼玉県(1990)
「総合保養地域の整備に関する基本構想−秩父リゾート地域整備構想−」埼玉県(1993)
「県営公園利用実態調査 報告書」(2000)


(表1)ミューズパーク来園者アンケート結果
  居住地 年齢 間柄・性別等 来園頻度と時期 交通手段 来園目的 滞在時間
1 小鹿野町 老年 夫婦 ほとんど毎日 ウォーキング 9:00〜13:00  4H
(お弁当持参)
2 秩父市内 60代 友人 男性2人    散歩 運動 約1.5H
3 横瀬町 70代
小学生
祖父と孫 たまに 孫の子守 フリーマーケット・散歩  
4 秩父市内 60代 夫婦 ほとんど毎日 運動 森林浴 夏5:00過ぎ〜(往復1H程)
冬9:00か10:00〜
5 秩父市内 70代 友人 女性2人 週1回くらい ウォーキング 1.5H
6 秩父市内 老年 夫婦 いつも ウォーキング  
7 さいたま市 50代 女性 2回目 写真 近くまで来たついで 2〜3H
8 皆野町 老年 男性 初めて 奥さんを医者に預けた間の暇つぶし  
9 群馬 
高崎市
60代 男性 2、3回目
春と秋
紅葉 写真 AM
10 志木市 40代
6才
親子 3回目くらい 電車とバス 散策 10:00〜16:00くらい
6H    (お弁当持参)
11 狭山市 30~40代 夫婦 10回目くらい
春・秋が多い
紅葉 ウォーキング AM
12 秩父市内 60代
70代
夫婦 だいたい毎日 散歩 10:00〜昼まで
13 北本市   祖母・父親・娘 3、4回目
夏は蛍を見に
紅葉のコース  
14 小鹿野町 60代 友人 男性2人 週2回 散歩 10:30〜昼  約1.5H
15 秩父市内 60代 男性 土日は必ず 運動 昼前後  50分 
16 群馬 
太田市
70代 夫婦 初めて 秩父観光 道の駅のパンフで知って  

  居住地 年齢 間柄・性別等 来園頻度と時期 交通手段 来園目的 滞在時間
17 横瀬町 60代 女性(夫婦
園内で別行動)
毎日 犬の散歩 AM
18 横瀬町 50代 女性 週4〜5日 ウォーキング 昼〜2:00くらい 2H
19 熊谷市 50代 友人 女性2人 年1回
春 紅葉
秩父駅から徒歩 紅葉  
20 狭山市 60代 男性 年1、2回
ふるさと祭りと紅葉
バイク 紅葉 犬の散歩
フリマ インラインスケート
13:00〜14:30くらい
21 秩父市内 60代 男性(妻と孫2人
園内で別行動)
週1回くらい まご(和光市・8才)の子守  
22 群馬 
伊勢崎市
20代 カップル 女性 3、4回
男性 初めて
紅葉  昼〜14:00   2H
23 秩父市内 70代 男性2人 毎日 散歩 14:00〜
24 東京 
練馬区
30~40代
小学生
親子4人 5、6回目 秩父の温泉に行く途中に寄った 14:00〜15:00くらい
25 秩父市内 50代
20代
親子 母親と娘 月1、2回 犬の散歩 昼〜3時くらい 2〜3H
26 川越市 50代 夫婦 何度か来たが
ゆっくり歩くのは初めて
なんとなく
車が向いた方に来た
13:00〜  約1.5H
27 小鹿野町 60代 男性 週4回  散歩 15:00〜  1.5H
28 横瀬町 60代 夫婦 月3回くらい ウォーキング 紅葉 14:00〜16:00  約2H
29 滑川町 20代 カップル 2回目 ドライブ 13:00〜16:00  3H 
30 小鹿野町 60代 夫婦 週1回 ウォーキング 15:00〜16:00  1H


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